計測ツール③性能確認と応用例

はたして作成した計測アンプは「超低雑音」と言えるのか?(爆)
おまけに自作DACのS/N比と、素子の雑音も測定してみました。



【内部レイアウト】
当方が作成した計測アンプの内部です。稚拙なレベルの実装です。(爆)
この程度の日曜工作でも実用になるという事であります。
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ケースは樹脂製ですが、アンプ部だけはアルミテープ等でシールドします。
シールドは確実に基板のGNDへ接続します。
端子、スイッチ、パネルも完全にGNDへ接続します。
これらはハムノイズを防止するために必要です。
スイッチング電源基板は2cm以上の距離を離し、こちらはシールド無しです。


【最大出力電圧】
計測アンプに正弦波を入力して出力波形をオシロで確認しました。
波形がクリップする出力電圧から、少し余裕を持たせた最大出力を設定します。
+60dB時は最大出力4Vrms。+40dB時は最大出力1Vrms以内で使用可能です。
最大出力範囲を外筐ケースに書き込んでおけば間違いません。
ちなみに、
+40dB時にはNFB抵抗100Ωが重過ぎてドライブ不能になるんですな。(爆)


【スペアナでV/√Hz】
どこまで低雑音に仕上がったのか?
V/√Hzの単位は入力換算雑音電圧密度です。それを測定してみました。

当方所持のパソコン入力インターフェイスは中程度の性能しかありません。
計測アンプの利得が+40dB時には測定限界以下になってしまいます。
よってNJM5532を使用した+40dBアンプを入れて測定しました。
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(測定限界にハムノイズが乗ってます。パソコンや測定時の配線が影響してます。)

*当方所持のパソコン入力インターフェイスを使用しスペアナ測定すると、
  2Vrms入力で0dBです。1Vrms時を0dBとするため6dBを引く必要があります。
*V/√Hzの単位は1Hzあたりの電圧なので、分解能も1Hz未満で測定します。
 「サンプルデータ数」の設定値ですな。例えば44.1kHzサンプリングの場合には
  44100Hz÷65536=0.67Hz  65536以上を選択すれば1Hz以下です。
  更に瞬時値ではなくてアベレージの値を記録します。

それでは測定値から入力換算雑音電圧密度を計算してみます。
①スイッチが+40dBポジションの時
 -108.67dB-(-6dB)-80dB=-182.67dBV/√Hz  (@1kHz)
10^(-182.67dB/20)=0.735nV/√Hz  (@1kHz)
②スイッチが+60dBポジションの時
 -88.98dB-(-6dB)-100dB=-182.98dBV/√Hz  (@1kHz)
10^(-182.98dB/20)=0.71nV/√Hz  (@1kHz)

これは超低雑音と言われるAD797の0.9nV/√Hz @1kHz よりも低いですな?
LT1028を単品で使用した場合の0.85nV/√Hz(TYP)@1kHz よりも良いです。
勝ったっぽい。(爆)


【本当に勝ったのか?】
0.71nV/√Hzに周波数範囲を掛けて雑音レベルを計算し、実測値と比較します。
前回に掲載しましたが、計測アンプ+60dB時の周波数特性は123kHz(@-3dB)
よって雑音レベルは
0.71nV/√Hz * √123kHz=0.249μV
これに対して実測値は下図です。(前回の最後に掲載した図です。)
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計算値0.249μVに対し、実測値0.232μV。 93%で一致しました。
つまり0.71nV/√Hzは信ずるに値するという事です。




私は勝つの 私に勝つの   by新藤恵美
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(爆)       2016.04.24画像追加。






【IHF-Aフィルタと合わせた性能】
次は、IHF-Aフィルタ込みの特性を見てみました。
+60dB計測アンプとIHF-Aフィルタを合わせて、雑音性能を確認しました。
オシロの限界があり、ここでもNJM5532使用の+40dBアンプを併用します。
具体的には下図の結果です。
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-143dBVという話をすると、ほぼ嘘つき呼ばわりされますので注意。(爆)



【自作DACのS/N比を測定する】
当機の計測アンプを用いたS/N測定の具体例です。
DACの測定には前々回に書きました様に20kHzLPFを併用します。
無音のCDを自作DACで再生し雑音レベルを測定します。
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がくんと雑音量が下がるのが20kHzLPFです。ノイズシェーピングの雑音ですな。
そしてIHF-AフィルタをONにした結果が下図です。
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S/Nの、SはCDプレイヤーと同じで2Vrms。Nが上図の5.51μVrms。よって
S/N比=20*log10(2Vrms/5.51μVrms)=111dB

これは? DACの終段バッファに使った2SK241GRの雑音かも知れませんな。
2SK241GRが高音質の理由は自然なディザが掛かるという空想仮説。(爆)
やっとDACのS/N比が測定できる所までたどり着きました。



【抵抗の雑音を測定】
これは応用編ですな。
けっこう低雑音に仕上がったので、抵抗が発する雑音も測定できそうです。
抵抗の雑音には理論値があるとの事で、下図に引用させて頂きます。
理論の詳細は解説出来ませんので各自お調べ下さい。(爆)
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上図のグラフから、1kΩでは約4nV/√Hz、7kΩでは約10nV/√Hz、ですな。
この理論値に似た結果が測定出来ますでしょうか?
測定値は下図になりました。
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入力換算雑音電圧密度を計算します。
0Ω: このページの上の方で測定済みです。 0.71nV/√Hz  (@1kHz)
50Ω: -85dB-(-6dB)-100dB=-179dBV/√Hz  1.12nV/√Hz(@1kHz)
220Ω: -78dB-(-6dB)-100dB=-172dBV/√Hz  2.51nV/√Hz(@1kHz)
1kΩ: -73dB-(-6dB)-100dB=-167dBV/√Hz  4.47nV/√Hz(@1kHz)
8.2kΩ: -66dB-(-6dB)-100dB=-160dBV/√Hz  10.0nV/√Hz(@1kHz)
32kΩ: -58dB-(-6dB)-100dB=-152dBV/√Hz  25.1nV/√Hz(@1kHz)

けっこう理論値と同じくらいの数値ですよ?
自作の怪しい測定ツールですが、それなりに近い値が測定出来るという訳です。



【トランジスタの雑音を測定】
次も応用編です。測定回路は増幅しないエミフォロとしました。
ベース端子はGNDにショート。またはチップフェライトでGNDへ接続。
動作電流は1mA固定とします。
ブレッドボード使用なのでシールドが完璧にできていません。
ハムノイズやフリッカーを拾って髭だらけですが、その点はご免なさいです。

まずはバイポーラTrですが、品種の差は無くてどれも同じ雑音量の様です。
発振しちゃう等の差はありますが、発振対策してから測定しましょう。
その下には低雑音JFETの測定結果を2種。
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信号源インピーダンスが低い時はやはりバイポーラTrが有利の様ですな。
2SK170BLも低い入力インピーダンスではBJTに負けるという事ですか?

次にgmの低いJFETと小信号MOSFETを見てみました。
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やっぱりMOSFETは雑音が大きい。2SK30Aはそれほど低雑音では無い。
ちょっと見ただけですが色々と具体的に判りますな。
ドレイン電流等の条件を変更すれば違いも出て来るでしょう。


当ツールは単純な増幅器とフィルタですから雑音以外の観測も可能です。
この計測ツールを使用した記事もちょっと予定しております。




【注意事項】
実験は自由ですが、当方の検討結果とか考案の回路を勝手に採用しないで下さい。
記事を鵜呑みにせずご自身で実験評価して下さい。当方は一切サポート致しません。


以上です。




2015.11.26 朝に追記。↓
トラ技から低雑音アンプLNA-1が販売されました。「おじさん工房」の作品ですな。
LNA-1のマニュアルをダウンロードして見てみましたら、
APB-3と接続して測定したグラフが掲載されています。
LNA-1の利得も当方の自作品と同じ+60dBなので、同じ条件で確認できるかも?
という事で、LNA-1のマニュアル掲載グラフと同条件で当方のやつも見てみたよ!
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*周波数特性はLNA-1の方が2MHzまで伸びている様ですが、
 当方の自作品は上図の通り130kHzあたりから下がり始めます。
*上図の通りスイッチング電源のノイズもありますが、レベルが低いので無問題。
*肝心のノイズですが、上図の通りLNA-1より4dBくらい低い様です。
 0Ωショート時の雑音量を見てみますと、
 上図グラフの「0」は0dBu/√Hzなので、「0」なら1.0nV/√Hzになります。
 1.0nV/√Hzよりも4dB低いという事なので、
 当記事に掲載した当方の自作品は0.63nV/√Hzという事になります。
 嘘じゃにゃいニャロメ!












by ca3080 | 2013-12-14 09:26 | 電子工作(一般)
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