DEPP-Amp その④差動の縛りとTr選定

差動です。前段です、しかも差動なのにパワー終段です。 えぇ?何それ?
そのお陰で気難しい所があります。 量産は不可能ですな。(爆)





えーまー、紆余曲折を経由していったらこうなっちゃったと言う、
そんな回路です。
そんな当ブログの経緯は DEPP-AMP① でご確認頂けます。
不明点があれば過去記事をご確認頂くか、
自作して測定するのが手っ取り早いです。(爆)

さらに詳しくは参考書や教科書などをご参照ください。







回路形式はDEPPという非常に古い回路です。片電源12V。
出力トランスをサンスイのST-41Aで考えていますので、0.1W程度の出力です。
素子はバイポーラTrのNPNオンリーで、動作モードはA級です。
そして差動増幅。しかも差動のダーリントン接続。素子はこれだけ。
オールオーバーのNFBも可能でしたが音質面も含めて局部帰還に変更致しました。

現時点では下図の回路です。
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【ビンテージ・トランジスタを使いたい!】
まあ目的と致しましてはヘッドホンアンプ程度でしょう。
すると音質面が気になりますな。
高音質にするにはメタルキャンの古いトランジスタを使いたい!
と思います。

そこで下図の様にトランジスタを変更してみたい訳です。
高音質なビンテージのメタルキャン・トランジスタですな。
この回路のままで成立できるのか?
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という事で、ブレッドボードで実験した訳で御座います。
電源投入直後は下図の様な感じに普通に増幅動作致しました。
波形クリップする電圧が少し落ちますが、まあ聴感上は判断不能なレベルです。
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な〜んだ簡単にイケるじゃん!

と思っていたのもつかの間、
あっという間に下図の様な感じにクリップし始めました!
熱で特性劣化? 5分と持たない?
e0298562_20032398.png
えへへへ?
来たな?














【影響の強い箇所を探る】
素子の温度が上昇すると差動バランスが崩れて特性劣化する。
その影響で波形クリップ電圧が下がっちゃう訳です。
しかし、どこの素子が最も影響するのか?
という所を探ってみました。

まあ、だいたいはダーリントン前段ですか?
普通は前段を疑いますな。
前段の差動トランジスタを別品種の組み合わせにすれば、
hfeや他の性能が大きくズレる状態をシミュレーション可能かも知れませんね?
という事で、下図の様に別品種のトランジスタでシミュレーションしてみます。
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さすがに2SC2240と2SC1815は全然違うだろ?
と思いますが、
劣化した不具合波形が再現できるでしょうか?
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おろろ?
再現せず?
前段の差動トランジスタが2SC2240と2SC1815でも無問題?
おーっと、まさかのファインプレイ!
異種タッグマッチで絶好調です!(爆)

・・・
白タオルを投げ入れて頭を冷やしまして、
何だっけ?
ダーリントン後段でした。そちらはどうでしょう?

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下図の様に、見事に再現できました!
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完全に似ている波形と思います。













【一般的な差動の矯正方法】
差動バランスを矯正する必要はあるのか?
どうせちょっとクリップするだけでしょ?
んー、
基本動作なので問題です。
波形クリップは見た目に判りやすいですが、
差動バランスの崩れは基本特性の多くの部分に影響しますので、
差動バランスは極力合致している方が良いでしょう。音的にも。

さて、差動バランスの崩れに対しまして、
電流帰還(エミッタ帰還抵抗)を用いて対策するのが一般的です。
しかし、
今回の回路は差動であり、ダーリントンであり、パワー段です。(爆)
通用するん?どーだんべ?
まあ動作電流などを考えますとエミッタ抵抗は1Ω程度とするしかありません。
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かなり厳しそうですよ?
色々いじくった結果は下図でした。
e0298562_20273908.png

Q1=2SC1627 、 Q2=2SC3074 というズレた後段の組み合わせに対して、

まあ調整という事で、
R17=0Ω 、 R18=2Ω  という感じに調整すれば補正できる様です。

しかし現実的に2Ωのトリマー抵抗を採用する事は難しいでしょう。
トリマー抵抗の選択肢が、ほぼ無い!














【そうじゃない差動の矯正方法】
という事でして、上記の案件は現実的ではありません。
別の案件と致しまして下図の方法も考えられます。
ダーリントン後段のベース〜エミッタ間に抵抗を入れて調整します。
e0298562_20344697.png
これもな、
色々といじくり回しましたが、
1kのトリマー抵抗でOKなんだか、100kがベストなんだか、さっぱり判らない。
定められないんですよ。(爆)
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一応は調整可能ですな。(爆)
しかしカットアンドトライの域を出ない!

ダメだこりゃ。
ペア選別しか無いじゃん!(爆)

正攻法過ぎる結論でした。(爆)














【それ以外の注意点】
差動を意識してペア選別するとして、
別の要因で特性劣化するケースもあります。

下図は2SC4001をダーリントン後段に使用した例です。
2SC4001は音が良いですし、今回の動作範囲は定格以内です。
そこだけなら無問題。
しかし歪率が非常に悪くなりました。
e0298562_20424890.png
この原因は何でしょう?
トランジスタの定格票を見ただけでは判りません!
hfe対Icのグラフを見ないと判断できません。

今回の回路は最大70mA超の電流が流れます。
その時にhfeが下がってるのは駄目ですよ。
e0298562_20461840.png
2SC4001ですが、
70mA時には hfe=60 程度ですか?
いやちょっと駄目ですな。













【後段を2SC3421ペア品に変更で解決】
んー、
差動前段の石はあんまり影響は無さそうですな。
前段にはビンテージ・トランジスタも使用可能かも知れませんな。
ダーリントン後段の石は気難しいですな。ここは近年の石しか選択肢は無さそう。

という事から、後段の石として手持ちの2SC3421Yを選択致しまして、
hfe選別にて170程度の品物からペア組しまして実験致しました。
長時間が経過しても波形は無問題となりました。
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下図の様に、2SC3421Yなら70mAを流した時のhfeも低下致しません。
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2SC3421Yに対して、他の選定基準(定格等)も問題ありませんな。
余裕です。
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熱結合もネジで止めれば簡単ですし、
TO-126以上のパッケージサイズが良いんかもね。
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色々と勉強になりました。















【DEPP-AMPダーリントン版のまとめ】
今回の投稿をまとめますと下図の感じです。
e0298562_21051487.png

それでも波形クリップ電圧に問題が生じる場合、
下図の方法が有効かも知れません。
e0298562_21064894.png
波形クリップは見た目に判りやすいですが、
差動バランスの崩れは基本特性の多くの部分に影響しますので、
差動バランスは極力合致している方が良いでしょう。たぶん音的にも。









でもさぁ、
hfeの測定って、
難しいんじゃねーの?












【アホアホhfe選別器】(爆)
厳密にhfeを測定して意味があるんですか?
無いんです。
あのね、
hfeの測定誤差が多くても問題無いんですよ。
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各々のトランジスタを同じ条件で測定しますので相対的に合っていればOK。
hfeは何となく150近辺などと判ればOK。同数値でペア組できれば無問題。

だからさ、選別器の電源電圧も10.6Vじゃなくていい訳ですよ。
こだわらずに006Pの9VでもOKでしょう。

世の中は学校や教科書の書いてある内容通りではありません。
いい加減なテキトー回路でも使える範囲内で無問題なら堂々と通用するんですよ。
ペア組結果の評価も含め、自己責任の範囲内にてお願い致します。(爆)










まーその、
今回は音質を耳で確認する所までには至りませんでした。
次回はAmp以外の周辺基板も組み立てて、電気的性能を測定しまして、
音質の可能性も評価してみようと思います。
可能性が高ければオーディオ工作として新たに考えようと思います。













当方は一切のサポートを致しません。だって古典回路だもん。(爆)
古典回路なので誰でも自由に自己責任の範囲にてご利用可能です。
局部帰還にして独自化した部分も大した方法じゃないのでご利用OKと致します。

しかし当記事の定数や部品のまま使うのではなく、自分で設計して下さい。
解らない所があったら参考書を見れば載ってますよ。
そして皆さんが設計されたものに関して当方は一切関知致しません。
たまたま定数が一緒でもそれは偶然の一致です。当方は無関係。(爆)


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by ca3080 | 2017-06-16 22:02 | 電子工作(一般) | Comments(2)
Commented by flip-flop at 2017-06-21 20:32 x
初めてコメントします。flip-flopと申します。

C968での症状は、エミッタ抵抗ゼロでの単なる熱暴走に見えますね。Re=0では、かなり厳重な熱結合と放熱処理が必要です。

PP用トランスではDCバランスの崩れが直流磁化による低域特性劣化に直結するので、固定の1Ωはエミッタ抵抗入れた方が安定するでしょう。
HFEばらつきはベースの47kΩでバランス取ってやれば選別不要と思います。
Commented by ca3080 at 2017-06-22 06:19
どうもこんにちはflip-flopさん。アドバイスありがとうございました。
バイアス抵抗R12、R13の47kΩに追加して、
各々500kΩくらいのトリマ抵抗を直列に入れれば
hfe選別しなくても調整可能になるとは思います。

当方のやり方が正しいわけではなく、色々なアプローチがありまして、
それぞれ利点や欠点があります。好きな手段を取って問題解決すればOKと思います。

当方の場合はhfe選別と簡易な熱結合で問題解決できた様です。
トリマ抵抗はちょっと音質面で好きではありませんし、(爆)
量産可能な回路はパクって販売する人が出るので掲載したくありません。
そしてさらに、発展型の回路も考えておりまして、
そちらの絡みもありますので当方はこのまま進めさせていただきます。

窮地に落ち込んで痛い目を見たら(爆)
アドバイスを参考にさせていただこうと思います。
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