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ER-4S その① 等価回路

ER-4Sは有名な高音質イヤホンですな。ER-4Pも内部抵抗が違うだけです。
個人的に色々といじくって楽しんでいましたが、ネタを公開しようと思います。




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【はじめに】
ER-4Sはクリスタルクリアーな透明な音が特徴ですな。
中高域だけなら当方の改造ヘッドホンであってもER-4Sには勝てません。(爆)
ER-4Sが完全に故障したら、他メーカー等の進化したモデルを捜すんじゃなくて、
また同じ物を買う様な気がします。(爆)

なにやら「三段キノコ」というニックネームで通用するみたいですな。
皆さん愛してるのね。(爆)
ER-4S その① 等価回路_e0298562_8415466.jpg


そんなER-4Sですが難点も多いです。
*価格がナニです。(爆)
*見た目もナニです。
*感度が悪い。音量が小さい。
*ケーブルを触るとガサガサ響く。
*個人差がありますが、当方はイヤーピースが耳に合わない。
*外界の音が聞こえないから外で使うと危険。(爆)
*妥協出来る範囲内ですが、ビニル線の音質があります。(爆)
 ビニルの音は苦手で、ちょっと圧迫感があって30分以上聴いていると疲れます。

まったく使いにくいやいねー。(爆)
壊れたら落胆が大きいですからね。いじくり壊したら最安店を探すしかありません。

各部のパーツですが、名称を記載しておきます。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_8445753.jpg

イヤーチップじゃなくてイヤーピースだなエヘヘ御免。

見えない所にフィルターがあります。音響フィルター兼、耳あかガードですな。
耳垢と耳油で劣化したら交換する必要があります。
無くしちゃったら困るので専用ケースに入れてしっかり保管。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_8472411.jpg

2016.10.17追記。フィルタが劣化すると全体に音量が小さく聞こえまして、
低音が目立つ感じになります。そう聞こえる様になったら交換ですな。
良好な時の音質とか、あるいは他のイヤホンとの音質差を覚えていれば判断可能。
それを忘れちゃう頭脳の人は?  …オラ知らね。(爆)






【タッチノイズの話】
ケーブルを触るとガサゴソ聞こえますが、付属のクリップが答えなんでしょう。
メーカーの意図通り、ツイスト線の部分が服などに触れない様に、
線が空中に浮く様に胸元あたりに止めてくれ、という事なんでしょう。
ツイスト線の部分ですがL/Rの線を縒り合わして長さ調整すれば良いんかいね?




【イヤーピースの話】
当方ですが、付属のイヤーピースが耳毛に押されて違和感があります。(爆)
ボーボーです。モジャリンコ。(爆)
まあ本当は、耳穴の入口から7mmくらいの所に段差があって
当方の耳穴が曲がってるのが原因かも知れません。
そんな当方の耳穴形状に対して最終的にたどり着いた結論は、
三段キノコの先っぽを切断して、二段キノコに改造する方法でした。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_913324.jpg

ユルいと低音が出ません。キツいと耳穴が痛くなります。
耳の形状は皆さん個人個人が違う形なので、誰にでも合う品物はありませんな。

欠点は耳垢がフィルターに詰まり易くなります。(爆)
針みたいな物で頻繁にクリーニングするしか無いんかいね?





2017.02.25 下記画像を追記。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_13181196.png











【ER-4Sの特徴を探る】
ここから以下が本題です。
ER-4Sをネット上で検索して調べてみますと色々と情報が得られます。
まずはトランスデューサー部分ですが、ER-4S、ER-4P、ER-4Bは同じ様ですな。
それぞれの機種の違いはケーブル部分に内蔵された抵抗値などの差みたいです。

ER-4Sのケーブル部分には100Ωが入っている。f特フラット、感度悪し。
ER-4Pのケーブル部分には22Ωが入っている。f特は低域重視。感度が良い。
ER-4Bはバイノーラル再生専用機なのでコンデンサ等も入っている様です。

普通に考えますと、100Ωなんか入れたら感度が悪くなるのは当然で御座います。
しかし22Ωに変更するとER-4Pと同じになって高域が下がっちゃう訳ですな。
この辺の仕組みがさっぱり判りませんな?

つまりは、これだけの情報だけでは改善策を考えるには浅過ぎるという事でしょう。
当方が納得出来るまで深く探ってみようと思います。





【インピーダンス・アナライザで測定する】
ER-4Sはブラックボックスなので、インピーダンス・アナライザを使って
特性を解析してみるのが近道でしょう。
まずはトランスデューサーとケーブルを合わせた総合特性です。
下図の測定結果となりました。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_1020616.png

*なるほど1kHz以下ではほとんどが105.54Ω。
 ケーブル部分が100Ωなら振動板ドライバの部分は5.54Ω以下ですか?
 エネルギーの無駄と言いますか、妙な感じですな。
*あとは共振周波数が2.8kHzくらいにあって、高域になるに従い上昇すると言う、
 スピーカー特性を右にシフトした様な特性という事が判ります。
*つまり等価回路的にはスピーカーに似た様な構成と言えます。

次はケーブル単品を測定してみました。
100Ωが入っているのはテスターでも判りますが、それだけでは信用できません。
小さいコンデンサとか本当に無いの?
ER-4S その① 等価回路_e0298562_1024494.png

*上図とは逆方向から測定しても同じでした。
*完全に横ばいで100Ωでした。純抵抗です。
*ケーブルの中にはコンデンサとか本当に無かったな。疑ってすんません。(爆)
 でもこれで確証が得られました。100Ωしか入ってないんだいね。

次はトランスデューサー単品ですな。こんな結果でした。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_10354389.png

*んーー、100Hzあたりでは3.74Ωです。かなり低いですな。
 やっぱりAMPのエネルギーはほとんどが100Ωで熱に消費される様です。
 3.74Ω÷103.74Ω≒0.036  音に変換されるのはたったの3.6%(爆)
*位相の変化量が共振周波数で非常に大きいですな。
 共振点の所を無視して等価回路を作るのは駄目っぽいです。
*そして、高域での上昇がデカいですな。これは厳しいですよ、
 このグラフから等価回路を作るには共振点の所を拡大できれば良いんですが…
 どうすんべ?





【ネット・アナの結果と等価回路の考案】
簡単には、APB-3のネットワーク・アナライザで測定しまして、
その結果も加味して等価回路を作れば何とかなるでしょう。
トランスデューサー部分に印可される電圧(周波数特性)はこうなりました。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_1144069.png

*やっぱりケーブル部分の100Ωで電圧降下しちゃうのが大きいですな。
 100Hzでは28dBくらいの減衰量。やっぱり電気の無駄遣いですな。(爆)
*まあ一応は各々の周波数に対する減衰量を拾う事ができましたから良しとします。
 同じ減衰量になる様に等価回路を作成すれば良いですな。

等価回路の考え方は過去記事スピーカーの等価回路に記載しました。
下図の回路となりました。当方のオリジナル考案です。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_11113178.png

*トランスデューサーの直流抵抗はR2=3.5Ω
 共振点の特性はL1,R3,R4,C1
 高域の上昇分はL2とR5ですな。
 詳しい計算の方法などは過去記事のスピーカーの等価回路をご参照。

上記の等価回路で、減衰量をシミュレートしてみた結果が下図です。
ネットワークアナライザで測定した減衰量とだいたい合ってますな。
位相特性もおおむね似ています。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_11164561.png


次にインピーダンスアナライザで測定したインピーダンス特性と比較してみます。
シミュレーション上では下図の特性となりました。これも似た様な感じです。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_1119487.png


まあつまり、当方の考案した等価回路は本物と似ている、という事です。





【ER-4SとER-4Pの差を探る】
さて、今回の記事の目玉ですな。
ER-4SとER-4Pではケーブル内蔵の抵抗値が違いましたが、
何でER-4Pは高域が減衰するのか? この答えが得られます。

回路的には下図ですな。
ER-4Pはケーブル抵抗R10が22Ωだった訳です。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_11235994.png


この回路から減衰量をシミュレートしてみます。
各々のトランスデューサーに印可されるレベルをグラフ化する訳ですな。
下図です。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_11251229.png

*緑のカーブがER-4Pで、青のカーブがER-4Sです。
 低域の音量は約12dBの差が生じる様です。
 つまりER-4Sよりも、ER-4Pは音量が4倍大きいんですな。
*高域ですが、ER-4Sはフラットな音と言われています。
 それに対してER-4Pですが、1kHzを基準に比較しますと、
 11.572dB−4.849dB=6.723dB
 ER-4Pは高域の音が6.7dB小さいという訳ですな。
*ER-4Pのグラフですが、ER-4Sのカーブをそのまま反映しようとしますと、
 20kHz以上では頭打ちとなって0dBを超えてしまいます。
 つまりER-4Pで高域を上昇させるのは不可能と言う事ですな。

もうちょっと判り易く、ER-4SのレベルをER-4Pに合わせる様に、
4倍(+12dB)のアンプを入れてシミュレーションしてみようと思います。
下図の回路みたいにして比較してみました。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_11341984.png


グラフを描画しますと下図となります。
低域のレベルを合わせたので、高域のレベル差が明確に判るでしょう。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_11352187.png

*ER-4Sを基準にすると、ER-4Pの周波数特性は、
 2kHzで1.9dB減衰。
 10kHzで4.2dB減衰。
 20kHzで7.1dB減衰。

ER-4SとER-4Pの違いがはっきり判りましたな。
上記の様に、周波数特性の差が生じる理由も明確に判る様になりました。






【駄目だった実測】
実際に音を鳴らして周波数特性を計ってみましたが、
下図の方法みたいな簡単な方法では駄目な様です。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_114165.jpg

耳穴の特性をそのまま再現した様なジグが必要と思います。
あとは聴覚の特性を逆補正しないと駄目かも知れません。

測定結果は下図の様な感じで、起伏が激し過ぎて差を読めませんでした。
ER-4S その① 等価回路_e0298562_1144643.png

この方法は失敗。






【今回の〆】
いんや〜、見えなかった物が見える様になる! コレですな。
またひとつ世界が広く見える様になりました。
この等価回路を使って一歩踏み込んで、少々やってみようと思います。
たぶんですが、次回以降に投稿すると思います。





記事の内容は鵜呑みにせずご自身で実験評価して下さい。
そして当方はめんどくさいので一切サポート致しません。(爆)

以上です。










by ca3080 | 2016-02-07 12:13 | オーディオ&電子工作
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