前回の①から続きます。
まずは前回までの回路図を掲載しておきます。 下図の状態まで簡略化されました。(図をクリックで拡大可能。) 音質も変化はほとんどありません。聴き取れない程度? この状態にしても歪率には変化がありません。最小で0.01%です。 【ミラー回路経由が怪しい】 歪率ですが、 せっかく色々検討するんだから少しくらいは変化があっても良いと思ってましたが、 現状の回路構成で色々検討変更しても良くなりません。悪化は出来ますよ。(爆) こりゃ判らん! という事で細部を切り分けて様子を見ようと思います。 信号経路をプラスとマイナスに分離しまして、どっちが原因なのかを探る訳です。 最初は部品の多い方ですな。下図の様に、Iout+の信号経路を見てみました。 *Iout−の電流をGNDに流して不使用とします。 代わりに定電流Q000を仮設します。 *IV変換に要する電流も片側だけですから電流が半分になります。 よってIV変換抵抗R98を倍の値にします。 *この状態で正弦波が波形クリップせずに出力される事を確認しまして、 歪率を確認しつつ、ミラー回路の構成などを試行錯誤してみました。 その結果ですが、なにをやっても歪率が悪いです。(爆) 検討前の歪率よりも良くなる事はありませんでした。(爆) *3倍くらい悪いですな。(爆) やっぱりプラマイ両方を合成しないと駄目なんでしょうか? まあその前に、Iout−側も確認しておこうと思います。念のためですな。 *Iout+の電流をGNDに流して不使用とします。 代わりにミラー回路を定電流回路に仮変更します。 *IV変換抵抗R98を倍の値にします。 *この状態で正弦波が出力される事を確認し、歪率も確認しました。 Iout−側だけを使った出力で歪率を測定した結果が下図です。良い!(爆) 歪率0.0025%まで下がりました。意外な結果にびっくり!(爆) こりゃーアレですな。 ミラー回路そのものが怪しい!(爆) 痛たたた、ヤラレタ!(爆) 【他の人はなんでうまく出来るの?】 そこで疑問が湧くでしょう。 当方以外の他の設計ならば、同じ様なミラー回路を採用しても歪率が良い。 当方がアホで、とんでもないバカなミスを犯しているからかも?(爆) トランジスタのコレクタとエミッタを逆に使ってるとか?(爆) 恐らくですが、他の先生方の回路では下図の様に歪みがキャンセルされるでしょう。 Iout+とIout−両方がミラー回路経由なら問題点はマスクされ見えなくなります。 *歪率の主成分は2次歪でした。(前回掲載)上下非対称に歪むと言う訳です。 3次歪ならば上下が潰れる形ですからキャンセル不能でしょう。 *歪んでいるんだけどプラマイ合成するから見えなくなる訳です。 *当方の回路はIout+側だけミラー回路を経由するために問題点が見えたんですな。 【ミラー回路を何とかできないか?】 現段階で色々案件出ししたミラー回路はどれも歪率が同じくらいでした。 トランジスタ数個で構成するミラー回路それ自体に問題があるんでしょう。 「高性能カレントミラー回路の 設計とその応用」などネット検索で出てきます。 勉強になりますので、ご興味がある方はネット検索して下さい。 大学で検討されているくらいですから、色々問題があるんでしょう。 高精度にするには、下図の様な事も実施しなくてはならないかも知れません。 *MOSFETを使用。ゲート電流=ゼロ カスコードで端子間の影響回避。 *OP-AMPを使用してVa=Vbに強制的に合致させる。 う〜ん、高精度ミラー回路ですか? めんどくさそう。 モチベーションが下がるぞこれは。(爆) 【ミラー回路を使わないで出来ないか?】 ヤル気が出ない回路は恐らく音が悪いんでしょう。当方の勘です。 おケツがモゾモゾする時は背中の神様が「やめとけ」と言ってる合図です。(爆) 神さんわかったよ、ミラー回路を廃止だ!(爆) すんません。うたた寝をして変な夢を見た様です。 そんじゃーどうするん? そもそもはOP-AMPで反転型IV変換をする回路が推奨されています。 Iout+とIout−をIV変換しますから、それぞれにOP-AMPが1個づつ。 それらをプラマイ合成しますので、合計で3個のOP-AMPを使います。 +αでフィルター回路も必要です。OP-AMP尽くし。市販品の延長線上の音です。 はなから不採用ですな。 せめてOP-AMPを減らせないんかい?という事で、こんな回路を考えました。 *Iout+側だけをOP-AMPでIV変換します。 それとIout−側をR98で合成できますよ。 *これなら多少はマシかも? でもな〜、何かな〜、腰が重い。(爆) マイナスをひっくり返して、プラス側と合わせる? ほぼ合うでしょう。しかし、バッチリきっちりピッタリ合うのか? ん〜〜〜? 若干ズレると音もブレるんじゃないの?誤差容量とかで? そして気付きました。 【考え方を変えよう!】 これで、いいのだ。 プラマイ合成すると素晴らしい事が起こる、性能がアップする、 プラマイ合成で電子回路の修行するぞ修行するぞ修行するぞ〜! というTIからの洗脳にハマっておりました。(爆) でもよく考えて下さい。昔のPCM1704は電流出力が1本だったじゃない? それでもPCM1704は高音質だったんですよ? 今でも十分に高音質でしょう。 ご参考リンク 限界性能への挑戦と音質へのこだわり 4ページ目に注目!!! 脱洗脳! プラマイ合成のマヤカシに騙されるな!(爆) 【問題点は無いのか?】 一応ですがしっかり確認します。 歪率もだいぶ良い。ノイズもS/Nも問題は無し。音もちょっと良さそう。(爆) ヤル気が出てきましたよ。 問題点はポップ音です。原因はすぐに判りました。 IV変換抵抗の両端電圧です。電源ON時にドンと落ちてポップ音になる。 それから、電源ONから20秒以上かけて狙った電圧のゼロボルトに安定化します。 これはPCM1792の振る舞いですな。ハード設定だからなのか?まあいいや。 電源ONの直後は、PCM1792の出力電流はゼロだったんです。 それから20秒以上かけて徐々に電流値が増えて行きます。 下図の様に音声信号の振幅も同じふるまいです。 *という事は、電源ON時に定電流回路があるからポップ音が出る訳です。 *定電流回路も害悪でした。(爆) 意味無いですな。廃止!(爆) そして定電流回路のQ93,Q95を削除しまして、 IV変換抵抗の両端電圧と、出力RCA端子の動作を確認してみたのが下図です。 *電源ONの直後はR98両端電圧もゼロボルトです。 当然ですが出力RCA端子にポップ音は出ません。 *そしてPCM1792の出力電流が徐々に増えて行きます。 R98両端電圧も20秒くらい掛けて徐々に定常状態となります。 *その間ですが、出力RCA端子には最大で70mVのモワッとした電圧が出ますが、 問題の無い範囲でしょう。瞬間だけですし。 *カップリングCの時定数を大きくすると悪化しますので注意。 C104とR107の定数を無意味に大きくし過ぎるな!という事です。 *このままの状態で歪率も悪化せずクリップしません。 電源電圧も10Vあればクリップしませんな。 電源電圧を13Vにアップしてもこれ以上の良い歪率にはなりません。 電源電圧を8Vまで下げると怪しくなります。 【不使用のIout+はどうすんの?】 PCM1792の出力電流ですが、Iout+とIout−は交流的には逆位相です。 Iout+とIout−を合わせますと直流電流になります。方chあたり約13mAですな。 PCM1792の電源端子などに流れる電流は直流の方が良いでしょう。 Iout+は不使用ですが、IV変換基板につなげる意味はあるんですな。 *ただし印可電圧的にIout+とIout−を合わせるためにD101を使用します。 *高周波インピーダンスを合わせるにはC94が怪しいですな。 C94は削除の方向で、代替手段を取ろうと思います。 【電源OFFのポップ音】 そのままですと電源をOFFした時にポップ音が出ます。 IV変換抵抗の両端電圧が急激に下がるからですな。 これの対策としてミュート回路を設ける必要があるでしょう。 ミュート回路の追加場所ですが、R107の両端では駄目でしょう。 下図の様に出力端子に付加する事としました。 Q96の出力がGNDにショートされますが、 2SK241の出力インピは50Ω程度で無問題です。故障する事はありません。 *今回の投稿ですが、この回路が今の所の到達点で御座います。 究極の「一石IV変換」です。 一石IV変換てアンタ。(爆) *先に実行した先生が居るかも知れませんからオリジナル回路とは記載しませんが、 検討した内容とか考察、経過につきましてはオリジナルです。 トランジスタ1個だし。(爆) 【ミュートドライバ回路】 電源OFF時のミュート回路ですが、簡単に考えようと思います。 当方の作成したDACの電源は絶縁型SW電源です。 アナログ用電源とデジタル用電源は同期してON/OFFされます。 平滑コンデンサの容量も少ないので、電源が下がるタイミングを検出すればOK。 つまり下図の回路としました。 *C1に電荷をためて、電源OFFになったらQ1のベース電流が流れます。 非常に簡単な回路ですな。 *R2の抵抗値は大きい方が良いんですが、大き過ぎると漏れ電流と区別不能。 要はQ1のトランジスタに合わせて適度な定数とします。実験で決めます。 *Q98を確実にOFFさせるためにR5は絶対に必要です。 まあ電源がOFFします。下図のピンクが電源で、急に下がり始めます。 赤はミュートドライバの出力です。電源OFFのタイミングで+が出力されます。 下図は電源OFF時の実測波形です。小基板に組んで実験しました。 大丈夫みたいですな。未対策の場合は−5Vのポップ音が出ていましたが、 36.6mVp-pに下がりました。 タイミングも合っています。成功! 下図はミュートドライバも含めた電源部の回路図です。 OFF-MUTEをL/Rに分岐して配線します。 *電源回路の詳細は前回の記事に記載しました。 *Q100の品種ですが、当方の環境では2SA1015で大丈夫の様でした。 しかし漏れ電流が多い品物もある様です。 電源ONの後はOFF-MUTE出力が−13.5Vのはずです。−9Vとかなら怪しいです。 その場合は別のトランジスタ(2SA970とか、)に交換して試します。 *R110は47kΩで最適でしょう。10kΩでもOKですがミュート継続時間が短縮。 【その他】 いや〜とんでもない内容ですいません。 ミラー回路ちゃんサヨウナラ。プラマイ合成もバイバイ! 現行の自作DACが先にあって、 更に改善という形の提示じゃなきゃ信じてもらえない回路でしょう。(爆) 現行の基板を一部改造しての確認ですが現行回路より良さそうな音ですよ! ミュートなどは現行の基板に追加して実験できません。 これは下図の感じで実験しました。 次回以降に続きますが、 ・高周波ノイズ対策の見直しを行います。 ・最終の基板を作って色々な測定を行います。音質も評価します。 【注意事項】 実験や個人的な使用は自由ですな。しかし、当方考案の回路や検証を断りもせず 商品などに採用したり記事に掲載するのは駄目ですよ。パクりはイケません。 記事の内容は鵜呑みにせずご自身で実験評価して下さい。 そして当方はめんどくさいので一切サポート致しません。(爆) 以上です。 背中にいる神様の言う事を聞いてですな、碌な結果にならなかった場合、 その神様は貧乏神ですから危険です!(爆) 金輪際無視して下さい! 有名な神社でお祓いしてもらった方がいいかも? コメント欄にご質問がありましたので図を掲載します。(2016.07.05.) OP-AMPの基礎が判ってればな〜、簡単なんだけどな〜。(爆)
by ca3080
| 2015-11-28 11:44
| オーディオ&電子工作
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