ファインメット・ビーズは難しい

ご活用されている方が多いらしいですが、少々気になったので見てみました。



この投稿は音質の話じゃありません。
回路的な動作や問題点について評価してみようと思います。
ファインメット・ビーズはFT-3AM B4ARという品番の物を使いました。



【パルス信号の伝送路に入れてみる】
ファインメット・ビーズの効果を確認する場合ですが、まずは下記の様な
比較的高インピーダンスの配線に挿入した場合を実測しようと思います。
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これをオシロで見てみました。効果は特に確認できません。(爆)
この結果は意外でも何でもなくて、むしろ当然です。
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この様な接続はLRフィルタですな。
LRフィルタで効果的に阻止したいなら、そもそものインダクタンスが不足です。
コアに穴通ししたくらいじゃ足りません。
インダクタンスが固定なら、下図の様に負荷抵抗を低くしないと効果がありません。
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シミュレーション上のインダクタンスはテキトーです。相対的にご判断下さい。
インダクタに電流を流せば流すほど電磁力が強くなる、
と考えれば判り易いでしょう。

信号経路のホット側に入れる場合ですな。
●負荷が軽いと効果はほとんどありません。という事がひとつ。
●負荷を掛けずに確認しても駄目ですよ、という事も言えますな。
●電源は負荷インピーダンスが低いですから効くかも知れませんな。

それでも多少の効果があるぞ!
という場合は、下図の様に小さい容量も含まれていると言う事です。
ケーブル容量とか、受け側の入力容量などを合算した容量の影響があるでしょう。
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FB1とC1で共振しますから過剰なリンギング波形になる可能性も高いですな。
オシロで動作波形を確認してから採用を決めないと危険です。





【スイッチング電源に入れてみる】
整流ダイオードのリカバリ特性を改善してノイズ低減になるという話もありますが、
スイッチング電源の場合は周波数が高いですから懸念があります。

まあ具体例として、負荷16Ωと致します。
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この16Ωの負荷に対して、ファインメットビーズはどう考えれば良いでしょう?
まあスイッチング電源ですから、動作周波数50kHzに対してどうなのか? ですな。
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う〜ん1.73Ωは効き過ぎな感じがします。
スイッチングパルス波形は10%くらい減衰するかも知れません。

実際にそうなるのか実験します。オシロで波形を見てみました。
50kHz動作のスイッチング電源を想定。負荷16Ωで125mA程度の電流です。
整流ダイオードのリカバリ特性を改善する等の目的に使う事が出来るのか?
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オヨヨ???波形が異様に下がってますな? 5.5uHとは思えない効きです。
ヤバいですよ!

更に倍の電流を流してみました。
負荷を8Ωにして0.25Aを流します。
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こりゃ駄目ですな。危険です。
ファインメットビーズは効き過ぎでスイッチング電圧が落ち込む危険性があります。

まあ一応の確認ですが、
スイッチング周波数を50kHzから10kHzに下げてみました。
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う〜ん、これでも効き過ぎな感じがしますが、
スイッチング電源の動作としては見かけ上は動作するでしょう。
ただしON期間が短くなり、スイッチング素子のMOSFETに負担が掛かります。
やや危険ですな。




【ファインメット・ビーズのインダクタンス】
まあ5.5uHを想定していましたが、実際にはもっと大きい値なんでしょう。
ついでに一般的な磁気コアも測定してみました。

まずはフェライトビーズ類です。穴通ししただけですから、普通はこの程度です。
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次にアミドンのシリーズ中では最もインダクタンスが取れる#75材です。
下図の左が#75材。右はTDKのクランプコアですな。
穴通ししただけですが、けっこう大きなインダクタンスと感じる値です。
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そしてファインメットビーズです。えええ? すげーなこれ。
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どうりで効き過ぎのはずだよ。
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普通のフェライト・ビーズや磁気コアと比較して何が違うんでしょうか?
ファインメット・ビーズは1巻きあたりのインダクタンスが非常に大きい様です。
その他は普通の磁気コアと変わらないでしょう。程度問題ですな。
電子部品ですから、使い方を間違えば性能劣化したり危険な事にもなります。





【スイッチング電源のまとめ】
スイッチング周波数を整流するダイオード→ファインメットビーズの追加は禁止。
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直流の箇所ならOKですし、50Hz/60Hzの低い周波数なら問題ありません。
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【アンプ出力に入れてみる】
パワーアンプの出力に使う実験です。スピーカーケーブルに入れる訳ですな。
まずはRchの+側だけに入れて、何も入れないLchと比較してみます。
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ケーブルの途中に少々加工しましてファインメットビーズを挿入します。
まずは+側だけに入れます。
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そして歪率を測定してみました。
あ〜あ、残念ですな。悪過ぎです。(爆) 小信号で歪みが悪いのはいけません。
ピアノの音が消え行く所とか、ハープやマリンバの響きが濁るでしょう。
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一体どんな形に歪んでいるのでしょう? オシロで波形を見てみました。
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同じ様な歪み波形はD級アンプの実験をした時にも出てきました。
アミドンFB-801に6回巻きをしたコイルが似た様な歪み波形でした。
ファインメットビーズは直線性が悪いんですな。(爆)

以上の結果だけでは信じられない、という方もいるかも知れませんので、
次はプラマイ両方に入れてみます。
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GND側にもファインメットビーズが入りますから、
計測器をつないで測定する場合には注意が必要です。

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そして歪み波形です。駄目です。
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オシロが無くても、パソコンの入出力とWaveGene等で確認可能です。





【ファインメットビーズじゃなく、アンプの歪じゃない?】
アンプ出力に入れる実験ですが、
以上の結果だけでは信じない方も居られるかも知れませんな。(爆)
アンプ側で歪みが生じているんじゃない? という疑問です。
しかし、下図の様にして波形を確認すれば原因箇所が明確に判明するでしょう。
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上図の接続で、オシロで波形を確認しました。
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歪みの原因はファインメットビーズです。疑う余地はありません。(爆)

アンプ出力に入れると、
●ファインメットビーズは直線性が悪いので歪みます。
●同じ様に、フェライトコアやクランプコアを+側や−側に入れますと
 歪みが生じる可能性が高いです。そんな使い方はやめましょう。(爆)

下図は実験の様子です。
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【アンプ出力が歪まない使い方】
歪みが生じない使い方もあります。
ファインメットビーズの中に磁場が生じない様に電線を通せばOKです。
電流の行きと帰りの線を両方穴通しすれば磁場が打ち消し合います。
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この使い方で音質的効果が得られるかは判りません。
ファインメットビーズの取り付け位置ですが、コモンモード的な効果を狙うので、
アンプに近い側に挿入しましょう。スピーカー側に入れても無意味です。

そして問題は、配線2本を穴通しするので細い線しか使えません。(爆)
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ファインメットビーズをRch側だけに装着し、歪率を測定してみました。
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その結果ですが、何も入れていないLchと同じ良好な歪率になりました。
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判って使う分には問題が生じません。(爆)

アンプ出力に入れて実験するのは以上です。
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●フェライトコアやクランプコアを使う場合も上図の方法にしましょう。





【RCAケーブルに入れる】
さて、RCAケーブルに入れて使用するのは大丈夫なんでしょうか?
このページ最上部に負荷が軽い場合を考えてみましたが、悪影響は少なそうですな。
リンギングが生じる可能性がありますな。音質的な色付けになるんでしょうか?
フィルター効果は少なそうですな。(爆)
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ノーマルモードの効果だけを狙った使い方では無いでしょう。たぶん。
それをシミュレートしてみました。
*DACの信号源V1は1kHzの正弦波です。+1V〜−1Vの振幅ですな。
*これにノイズ源V2を加えます。100kHzの細いパルス波形です。
 ノイズの振幅は0V〜5Vにして見やすくしました。
ノーマルモードなので、DACとアンプのGNDは共通です。
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やっぱり効果はありません。(爆)

フィルター効果が得られるのは、負荷抵抗が小さい場合です、
という話を上の方に記載しましたが、その通りの結果になっちゃいます。
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あるいはアンプの入力端子にコンデンサがあれば効果を現すでしょう。
ファインメットビーズの実測結果が51.8uHで、効果的なコンデンサ容量を追加。
そしてリンギングが盛大に出ますのでR3の1kΩを追加しました。
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0,01uF程度まで大きくすれば効くでしょう。
そんな大きな容量が付いたアンプは無いでしょう。(爆)
でも何か、R3とC1だけが効いている感じがします。(爆)

●RCAに使用して、ノーマルモード的な効果はあまり無い、という事でしょう。





【RCAケーブルに追加しコモンモード的に考える】
次はコモンモード的な効果を考えてみようと思います。
+側だけじゃなくて、GND側にもファインメットビーズを入れているので
コモンモード的な効果を狙っているんでしょう。たぶん。(爆)

コモンモードノイズは下図の様な機器のGND間に生じる成分です。
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これをシミュレーション可能な様にモデル化してみます。下図の回路ですな。
ファインメットビーズの効果を考えてみます。
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まあ同じですな。あまり効果はありません。
(2015.10.21朝 ただしノイズ波形の形が変化しました。ノイズは減らないけど、
    リンギングが生じた訳です。音質に色付けが追加されるかも?)

まあ負荷抵抗を小さくすれば効くでしょう。コンデンサを付ければ効くでしょう。
コンデンサ追加に合わせて抵抗を追加しなくてもリンギングは大丈夫の様です。
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まああまり効果が無いという事でしょう。
電源ならC2を大きく出来ますから効果的です。





【RCAケーブルに追加し効果がある方法】
負荷抵抗が軽い場合でもコモンモードノイズを効果的に除去するには?
コモンモード接続にすればOKですよ。
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ただし、この対策で音質向上が得られるかどうかは不明です。(爆)

RCAに使う場合の結論ですな。
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【最終結論とか?】
ファインメット教という新興宗教なんでしょうか?
いかに危険な思想なのかをご理解頂けた事でしょう。(爆)
ファインメットビーズをお手軽グッズ扱いするのは頂けませんな。
少なくとも注意事項や禁止項目を明示すべきでしょう。

ところで当方はファインメットビーズを何に使ってんのかって?
今の所は研究中です。つまり不使用。(爆)






疑問に思ったら実験して測定しましょう。実験結果が答えてくれますよ。(爆)
実験や測定は感電や火災などの危険を伴う場合も多くあります。
電子回路の理解力を十分に得た上で、自己責任にてお願いします。
そして当方はめんどくさいので一切サポート致しません。(爆)

以上です。










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by ca3080 | 2015-09-26 09:43 | オーディオ&電子工作 | Comments(6)
Commented by X Underbar at 2015-10-02 00:00 x
ca3080さん、こんばんは、

ご無沙汰しております。
何時も楽しく拝見させて頂いております。

貴重な実験データーの開示、有難う御座います。
ノイズ対策部品のファインメットビーズに関しては、私も同じ意見です。
行き過ぎですね。

フェライトビーズ等は、発生しているノイズ成分に合わせて、ビーズの材質を選んで使います。
何でもかんでも、良く効くノイズ対策部品は、効果が高ければ高いだけ副作用があります。

解っておられる方は、少ないでしょうねぇ。
残念です!
Commented by ca3080 at 2015-10-02 07:31
どうもX Underbarさん。
さすがプロ級の先生!重みのあるアドバイスありがとうございます。

閲覧中の皆様、X Underbarさんのお名前の所をクリックお願いします。
Commented by Nightwish at 2015-10-06 00:16 x
こんばんは。
素晴らしい検証結果です。
効く効くといってもどれだけ効くのか分からないでいましたが、今日やっと分かった気がします。
音声信号ラインに入れると目に見えて歪むというのがまた衝撃的。
Commented by ca3080 at 2015-10-06 07:46
Thanks!Nightwishさん。
何か素晴らしい特徴があるのか?と思い測定してみたら、こんな結果が出ちゃいました。(爆)
Commented by simon at 2015-10-12 21:04 x
すばらしい検証記事、ありがとうございます。パワーアンプ最終段の正負電源にファインメットビーズをかますと音が途切れ途切れになる理由がわかりました。
 毒=薬でもあるので、この検証結果を活用すると逆に他では得られない効果も得られる可能性がありますね。整流用のダイオードの足にビーズを挿入するとそれだけで音質向上します。
 ビーズはちょっと使いにくい面がありますが、ファインメットシートは、コードに巻くとコモンモードチョークとして丁度いいかもしれません。
 ファインメット以外にも、アモビーズとかダストコアとか結構利くのがいっぱいあるので、試すのは面白いですよ。ACラインと直流ラインだけで結構いじり甲斐(害?)があります。
Commented by ca3080 at 2015-10-13 06:26
Thanks!simonさん。
50/60Hzトランス電源やデジタル機器の電源経路なら効く場合も多いと思います。USBケーブルにもコモンモード的な使用法ならOKでしょう。と言いますか、設計的に十分な考慮がされている機器ならば無用なんですけどね。(爆)
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