絶縁型SW電源の+15V入力対応

オリジナル回路の絶縁型SW電源です。比較的低ノイズでオーディオに適します。
いつもは+5V入力ですが+15V入力にも対応できた、という当方の備忘録ですな。



+5V入力に統一している理由の一つは、
色んな種類のACアダプターを持っていると、間違っちゃうんですな。
普通の人間でも調子が悪いときは必ずあります。酔っぱらっているとか。(爆)
よってACアダプターを5Vしか使わないというのも安全策なのです。

...そんな話では満足できない貴方はお読み下さい。(爆)


手順① 5V入力時の基本動作を頭に入れます。
手順② 15Vを印可した場合の問題点を考えます。
手順③ 問題点に対応させます。
手順④ 対策の効果を確認します。
手順⑤ 完成した物には変更点がありますが、弱点を予想しておきます。


【手順① 基本】
このブログで公開しております回路は基本的に下図の構成です。
e0298562_853629.png

*入力が+5V DC。
*出力電圧はほぼトランスT1の巻き数比になります。
 上図の例では6:18なので入力5Vに対して出力が±15Vとなる計算です。
*動作周波数はR3,R4,C4,C5の時定数です。実力で約120kHz。
 まあ実際には周波数を倍にしてみるとコアに起因する損失が増大する様です。
 別のコア材を採用すれば周波数を上げられるでしょう。
 アミドンFT-50-75の場合は、実験の結果から120kHz動作とします。
*無効電流が流れます。(トランスT1のLは6巻の時に99uHとして計算します。)
 無効電流=入力電圧÷インピーダンス
     =入力電圧÷(2*π*動作周波数*トランスのL)
     =5V÷(2*π*120kHz*99uH)
     ≒5V÷74.6Ω
     ≒67mA
*無効電力です。
 トランスの無効電力=入力電圧*無効電流=5V*67mA=0.335W
 これによってトランスの温度が問題になる事は無いでしょう。
*トランスT1の①④ピンは、OFF期間になると逆起電力が生じます。
 よって、入力=+5VならばQ1,Q2のドレイン端子には倍の10Vが印可。
*同様に、R1,R2によって、Q1,Q2のゲート端子にも10V近い電圧が印可。
 詳しい波形は下図となります。
e0298562_8105786.png

 MOSFETのゲート電圧を9.06Vまで上げられる事でON抵抗を小さくできます。
 更にR1,R2の接続経路は正帰還です。(シュミットトリガの様な動作。)
 正帰還によって波形のON/OFFが確実となります。(同時ON防止などに寄与。)

(2014.06.22 実力値で記載しちゃった数値を理論値に修正しました。)


【手順② 問題点の予測】
入力を+15Vにした場合を考えます。
*部品の定格電圧などは適宜変更します。詳細は省略します。
*入力=+15VならばQ1,Q2のドレイン端子には30Vが印可されます。
 VDS耐圧が40V以上のMOSFETを使いましょう。
*同様に、R1,R2によって、Q1,Q2のゲート端子に30Vが印可されるかも?
 これはNGっぽいです。
 普通のMOSFETはVGS定格が±20V未満だったりします。
 IRLU3410PBFのVGS定格は±16Vなので完全にNGでしょう。
*無効電流は単純に3倍です。
 無効電流=入力電圧÷インピーダンス
     =15V÷(2*π*120kHz*99uH)
     ≒200mA   まあ多いかも知れませんが場合によります。
*無効電力が問題です。
 トランスの無効電力=入力電圧*無効電流=15V*200mA=3.0W
 熱々の様です。コア材のキュリー温度を超えMOSFETが爆発燃焼!(爆)

問題点は上記の2点ですな。


【手順③-1 発熱の対策】
*最も簡単な対策は、トランスT1を巨大化して熱分散させます。(爆)
 3.0Wの電力を食っていても問題無い大きさのコアを採用すればOK。
 まあ場合によりけりで。(爆)
*発熱を押さえる、無効電力を押さえるには無効電流を減らすしかありません。
 無効電流に関係するパラメータは周波数とインダクタンスです。
 コア材がアミドンFT-50-75の場合、周波数を上げられません。
 実験すれば判ると思いますが、無理です。(爆)
 つまり、インダクタンスを上げるしか無いのです。
 何とかなりそうな巻き数を実験してみました。

 コア材のアミドンFT-50-75ですが、AL値は2750mH@1000turnsです。
 AL値x巻数x巻数=インダクタンス
 2.75uH*6t*6t=99uH
 2.75uH*12t*12t=396uH

 無効電流=15V÷(2*π*120kHz*396uH)≒50mA
 無効電力=入力電圧*無効電流=15V*50mA=0.75W

 コアのサイズが小さいので0.75Wというのも怪しそうですが、
 まあ何とか触れる温度くらいには収まるでしょう。


【手順③-2 VGS定格の対策】
MOSFETのVGS電圧を+15V未満に押さえる簡単な方法ですな。
まずはダイオードを追加して電源電圧にクリップさせる方法があります。
e0298562_8311446.png

VGS定格が±20VのMOSFETなら使えるでしょう。
まあ簡単にツェナーダイオードという手段もあります。
e0298562_8335024.png

これなら大丈夫でしょう。

しかし、
当方としましては、R1,R2で無駄な電力を食っているのが気になります。
そこで下図の方法を思いつきました。
e0298562_8363985.png

*R1,R2は+15Vに接続し、定数を大きくします。
 R1,R2,C4,C5の積分効果で波形の立ち上がりが鈍ります。
*正帰還効果としてはR5,R6,C6,C7を追加します。
 C6,C7で電圧を落とす事で損失が生じない訳です。
 まあ波形で見てみましょう。


【手順④ 効果を確認】
こんな感じで作りまして実験確認です。
余計な部品とか電解コンの定数が違う等は波形に影響しません。無視して下さい。
e0298562_8424181.png

下図はQ1のドレインとゲートです。基本のスイッチング波形ですな。
*ゲート波形の電圧が7.18Vと、適度に押さえ込み出来てますな。
e0298562_8431613.png


ついでにQ3のコレクタとベースも掲載します。
e0298562_845525.png


下図は2つのMOSFETがプッシュプル動作をしている確認です。
Q1,Q2が同時ONするとショート同様となり破壊します。
下図の波形では非常にうまい波形をしている事が判るでしょう。
e0298562_8472336.png


R1の両端波形を確認してみます。オシロの波形演算機能を使います。
*R1,R2の消費電力は0.077Wと低く抑える事が出来ました。
e0298562_850136.png


R5の両端波形も確認してみます。
*こちらも問題ありません。
e0298562_8514050.png

 今回の定数では、MOSFETのゲート電圧が7V程度しかありません。
 10VくらいにするにはC6,C7の定数を2200pF等に変更し、
 R1,R2,R5,R6を調整する等で可能となるでしょう。
 今回は面倒なのでC4,C5,C6,C7を統一して、同じ1000pFで構成しました。

無効電流の実測値は54mAくらいです。
抵抗の損失等も含まれますので、妥当な値が得られました。

温度は50℃近くなる感じですな。2次側に負荷が無い状態で50℃です。
例えば負荷で2W消費したとして損失を考えますと、
効率が80%くらいでしょうから0.4Wが損失となります。
無効電力0.75Wに加えて0.4W、合計1.15W。厳しそうです。
密閉する場合は要注意です。


【手順⑤ 弱点の予想】
・トランスの巻き数が増えます。巻き数にも限界がありますからね。(爆)
 巻線の長さが何倍にもなると導線の損失が影響し始めるでしょう。
・上記の例でいきますと、2W以上のパワーを扱うには不適合です。
 まあ大きなパワーを扱うには大きなコアを使って巻き数を落とせばOKです。
 コアが大きければ少ない巻き数でもインダクタンスは大きく取れます。
 扱う電力に比べたら、無効電力も問題無い誤差範囲かも知れません。
・+15V入力として最適化した場合、+5V入力では動作状態が怪しくなります。
 低い入力電圧では不安定動作となるでしょう。


まあこんな感じで御座います。
作っちゃった実験基板は...別の工作に利用するしかあんめえ。



【注意事項】
実験や個人的な使用は自由ですな。しかし、当方考案の回路や検証を断りもせず
商品などに採用したり記事に掲載するのは駄目ですよ。パクりはイケません。
記事の内容は鵜呑みにせずご自身で実験評価して下さい。
そして当方はめんどくさいので一切サポート致しません。(爆)

以上です。










作詞家のGerry Goffin氏19日に死去。
オールディーズの名曲「ロコモーション
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        2016.04.24画像入替。
















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by ca3080 | 2014-06-21 09:44 | 電子工作(一般) | Comments(8)
Commented by 懲りないyosshi at 2017-04-02 23:41 x
CAT様のスイッチング電源を用いたDACを作りまして、「オーディオのスイッチング電源は悪!」という洗脳から解き放たれましたw 長かった、、、、

そこで、「AC100Vから直接作れないか」という妄想に駆られまして、、、、少し勉強しました。
はじめはLTのプッシュプル専用ICでやろうかなと思っていたのですが、シミュレートの波形を見てやめました。デットタイムだらけ、、、リプルまみれ、、
再びCAT回路を研究した次第でございます。
マルチバイブレータ回路の応用だったのですね。

LTSPICE上では成功です。アホみたいにローノイズです。いくらグラフを拡大しても電圧一直線。
・まずは100Vをコモンモードフィルタにぶち込んでから整流平滑。
・MOSFETは650Vの耐圧の物に。
・駆動電圧は、さすがにフライバック電圧からは取れないので、トランスの2次巻から10Vを取る。(抵抗は100Ωで駆動部分に接続。300mW位喰いますねw)
⇒すると、電源ONのときに一瞬支障がでるので、100Vからのスタートアップ回路を追加。
・肝心のコアは、「FT-140#77」を使ったらいけるかな?と思っています。ALは2.4μHなので、50#75とそんなに変わらない。さらに、データシートによると77材は高い周波数にも対応しそうなので200Khzにしようと思っています。
1次巻きは60~70になりそうなので
4.44*f*N*Ae*Bmax の式によると直流重畳を踏まえても1600V位まで耐えれる!?ここはちと自信ないですが。。。。

以上はまだ妄想ですw 今から実際に作ってみようかなと思っています。
どこか間違ってますか?爆発して死にますか?
死ぬ前にご助言を、、、、、、



Commented by ca3080 at 2017-04-03 07:13
yosshiさん、今回も妙な食い付きですね。
ご自身すら気付かずに自滅型を選ぶという才能がある様ですな。(爆)

試験用の電源装置(あるいはスライダック+即断ヒューズ)が必要です。
オシロを繋いでもショートしない工夫(絶縁)が必要です。
そしてAC100Vからのフライバック電源をいくつか作った事があるとか、
それなりの経験と技術があれば試すのも可能でしょう。

しかし、初めての挑戦じゃヤバ過ぎますよ。
当然ですが、コンセントの端子にさわったら感電します。死にます。
安易な挑戦はお勧めできません。危険なのでやめましょう!

まあ動作したとしましょう。しかし、たま〜に変な事が起こります。
1000Vくらいのサージみたいなパルスがポツッと来たりします。
コアは耐えられても巻線の絶縁が怪しいです。2次側に漏電。
無線や携帯電話の電波を浴びて回路に貫通電流が流れちゃったり。
負荷が重い時に、ある温度になると暴走し始めちゃったり。
思わぬ異常が起こりやすいです。
そうなるとコンセント直結だもんね〜。
爆竹みたいな感じ。(爆)
MOSFETの焼けた破片がティッシュ箱に落ちたら火事になりますね。

色々危険なので業界基準があります。市販品はイミュニティ試験を行ってます。
規格の認証を通す事で故障しにくくなり、安全性をうたえる訳ですな。
Commented by ca3080 at 2017-04-03 07:33
上のコメントから続きます。

以下はACアダプタを推奨する理由です。
*ACアダプタ出力は定電圧化(低インピーダンス化)されています。
 コンセント周波数のリプルも非常に少なくなっていますね。
   →そいつに当ブログのSW電源をつなげば、
    まるで仮想のバッテリーみたいに見える訳ですな。
*ACアダプタ出力は、AC100Vラインから絶縁されています。
 これに当ブログのSW電源を接続する事で、二重に絶縁されるんですな。
 二重の絶縁でコンセントから回り込むコモンモードノイズが激減します。
   →ノイズが多いACアダプタを使ってもマスクされちゃう訳です。
    まるでコンセントに繋がっていない様に見える訳ですな。
*ACアダプタは安全です。安全規格の認証を取得しています。
 電波妨害やサージ等に対して対策済みです。一応はノイズも規格内です。
 発熱やショートに対しても保護回路が動作します。
Commented by なるほどyosshi at 2017-04-05 01:49 x
返信ありがとうございます。
なるほど、2重のレギュレートと絶縁のために今の仕様になっているのですね。。。

危うく、命を危険に晒しつつ、しかも高音質から遠ざかるという愚行を行う所でした。。。。
うーん、見事な自爆型人生。(何故バレた!?)

では、ACアダプタの品質は、CAT電源によりマスクされるため影響がほとんどない、と考えていいのでしょうか?
エエモンを使いたいな というのが人情ですが、、、
まぁ、我が糞耳で試してみるしかないですねっ!
ありがとうございましたっ!


Commented by ca3080 at 2017-04-05 06:47
意欲が凄く伝わってきますのでパワーのあるお方と思います。
良い方向にパワーを使えば大成功。変な方向なら大失敗ですか。
ドラマチックな波乱の人生で充実されているものとお察し致します。(爆)

まあね、
更に定電圧電源も入りますからACアダプタの影響はだいぶ薄まりますな。
[ACアダプタ]→[当ブログSW電源]→[当ブログの定電圧電源]

こんな程度でOKですよ。
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-02191/
当方がHPAmpに常用しているのはこれです。充電器。(爆)
https://www.amazon.co.jp/dp/B001290ESQ
上記2つの音質差は当方には判りません。
他にも使えるものがありますが当方は違いを感じません。

これはNG。物理的にNGです。
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-06096/
どこか端折って作っている様で5Vの電圧が波打ってる。(爆)

物理的にリプルが多い物はNGです。
電圧がコケる物もNGですな。瞬発力が無いんですな。
まあ出力電流が大きいものはおおむねOKと思います。
最大電流の半分以下で余裕を持って使えばOKと思います。
ノイズが多い物はフェライトクランプやフィルタ追加でOKでしょう。
そんな感じでご試聴されれば宜しいかと存じます。
Commented by ca3080 at 2017-04-05 20:43
音質向上の効果を求めるとするならば、
当ブログSW電源に対して下記の方向性にて少し効果がある事でしょう。

*コアをボリュームアップする。
 ご選択された様に、FT-140-77等の大きいサイズにして容量アップ。
 駆動周波数および何ターン巻くかは動作を見て最適化が必要です。
*巻線の損失を減らす。
 巻線を数本パラにして直流抵抗削減、低損失化します。
 コアサイズが大きければ何本もパラにして巻けますな。
 表皮効果も関係あり?
*MOSFETの選定。
 超低ON抵抗かつ小寄生容量の品物を探します。
 寄生容量が大きいと損失が増えて駆動周波数を高くできません。
*LCフィルタなどを低インピーダンス化。直流抵抗を小さくします。
 入力部のフィルタ、出力部のフィルタに使用するコイルの大容量化。
 インダクタンスの値は小さくしないほうが宜しいでしょう。
*1次側にLDOレギュレータを追加設置。
 損失および発熱が大きいですが直近で定電圧化すればバッチリ安定。
*2次側スタックダイオードに低損失の物を選びます。
 大電流時にVFの低い物。データシートのグラフを見て判断。
 ただしリカバリ特性や寄生容量がダメで逆効果の物も多いです。
*1次側フィルタコンデンサを追加増量します。
 現状の低インピ電解220uFにパラにして普通の電解コンを追加。
 場所は回路図の接続通りじゃなく横っちょに追加してOK。
 合計10000uF以上あればなんらかの効果があるかも知れません。
*5Vじゃなくて12V(15V設計)で駆動させる。
 昇圧よりも降圧の方が2次側の巻き数が少なくなります。
 昇圧よりも降圧の方が1次側の電流は減ります。
 1次電流が少なければ1次側の直流抵抗の損失も少なくなります。

大差にはならないと思いますが、追求すべき箇所はこんな感じです。
うまく出来るかはやってみないと判りません。
Commented by yosshi at 2017-04-06 01:54 x
さらに詳細なアドバイスまで、、、ありがとうございます!
*MOSFETの選定。
 超低ON抵抗かつ小寄生容量の品物を探します。
 ⇒最近流行りの「SIC MOSFET」はどうでしょう?
  creeの、寄生容量が激低(Ciss150pf Coss20pf Crss2pf)の奴は所持していますが、
  on抵抗が280mΩでした、、、
  両方満たすものはめっちゃ高い、、、、C3M0065090Dとか良さそうですけど、、、1200円て、、、
  IRLU3410は安いし、いいですよね。。。

*LCフィルタなどを低インピーダンス化。直流抵抗を小さくします。
 入力部のフィルタ、出力部のフィルタに使用するコイルの大容量化。
 ⇒これは記事にもあるノイズフィルタで良さそうですねっ 

*2次側スタックダイオードに低損失の物を選びます。
 ⇒低VFとなると、SIC系はつらそうですね、、、商用トランスの整流にはバリバリ使ってましたけど、、、

  あ、そう言えば、スイッチング電源の勉強をしていたときに、
  「ダイオード整流より、MOSFETを使った同期整流が良い!」みたいなことが書いてありました。
  主に損失面で有利みたいですが、、、
  TIからプッシュプル電源もいけるIC(UCC2540)とかありますが、、
  試す価値はありそうでしょうか??

あああ、また質問だらけになってしまった。。。
調べれば調べるほど色んな情報がでてくるから、選別が大変ですね。

  
Commented by ca3080 at 2017-04-06 06:47
まあ何個か作って差を見ればどんな程度なのか実感できるのでは?
適切な電圧電流設定ならばほとんど差は出てこないですよ。
↓ミニアンプの時に変えましたが、当方はそんな程度で十分満足。
http://ecaps.exblog.jp/21712505/
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