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2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源

構想というのは記事としてはつまらないですな。(爆)
実現可能な仕様を決めて失敗しない様にする。けっこう重要です。



8Ωスピーカーを鳴らすミニアンプです。

【出力段の定格を把握する】
ポタアンで採用したSOPパッケージのデュアル型のMOSFETですが、
すでにディスコン対象とか?(爆)
まあ他社品などで互換品がありますから柔軟に対応しましょう。
具体的な選定については過去記事の中程にあります。→ポタアン(爆) その②

今回は8Ωスピーカーを鳴らす事を目標としますが、
SOPパッケージの出力段でどこまで使えるでしょうか?
NDS9936と、FDS4935AのデータシートからAbsolute Maximum Ratings。
*VDSSは30Vなので電源電圧は±15V未満です。
*IDは70℃の時に4Aです。8Ω負荷なら16V印加されても2Aにしかなりません。
 電流定格に関しては余裕でOK。
*PDはデータシートにある(Note 1c)と同条件の基板なので0.9Wです。
 まあ放熱板に接続可能なら1.6Wくらいまで余裕ができるという事でしょう。
 現時点では厳しく考えておきます。
 つまり発熱によって下図の様に制限されます。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_1047314.png

 ホビーで家庭用ですから、0.5W程度で使っても大丈夫でしょう。(爆)
 ヒートシンク状の物を取り付けるかどうかは実際に作って温度を見て、
 お湯が湧く様な温度になったら考える事と致します。(爆)


【電源電圧を仮計算】
±15V未満なのは確かですが、(爆)
ここでは難しく考えずに、簡単に矩形波で考えてみます。
まじめに正弦波で計算してもOKですが、下記の考えでも良いと思います。
ブザーを鳴らす訳ではないならば矩形波というのは過酷な条件です。
しかし指標にはなりますし、過酷な分はマージンと考えれば良いのです。
出力段素子が最も熱くなるのは電源電圧の半分の矩形波です。
その点に疑問のある貴方はご自身でお調べ下さい。(爆)
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_1050082.png

等価的に下図の回路とみなせます。非常に判りやすく簡単になりました。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_11212084.png

よってアンプの素子の発熱は8Ωで消費する分を考えれば良い訳です。
この図からアンプの損失の式を作ります。
B級で交流なので半周期は休みだから1/2。
よって
  Pc=((Vcc/2)^2)/8Ω * 1/2  この式を変形して
  Vcc=2 * √(Pc*8Ω*2)
これに出力段は0.5Wで使う、というのを代入します。
  Vcc=2 * √(Pc*8Ω*2)=2 * √(0.5*8*2)≒5.66V

電源電圧は±5.66Vとなりました。



【アンプの出力を仮計算】
電源電圧が±5.66Vですが正弦波では実効値なので1/√2になりますから
  出力電圧=Vo=5.66V/√2≒4.0Vrms
  出力パワー=Po=(4.0^2)/8Ω=2W
出力2Wのアンプを作る事が出来る、という事です。



【ちゃんと計算する】
出力が矩形波でVcc÷2の電圧に固定という使い方も実際にはありません。
ブザー音を鳴らす方は上記の計算を重視して下さい。(爆)
更に、実際の部品で2Wの出力を得るにはもう少し電源電圧が必要です。
MOSFETが完全にONしてもON抵抗があり損失があります。それを加味します。
まあ±5.66Vじゃなくて、±6Vか、±6.2Vくらいか?
そのくらいは必要でしょう。

ちゃんと計算してみます。(爆)
参考書はトランジスタ技術SPECIALのNo.88でOKですかね?
当方の持っているトラ技SPECIALは古くて絶版になってます。(爆)

その本によるとB級アンプの電力損失は、
  Pc=1/(π^2) * (Vcc^2)/RL
これに先の電源±6.2Vと8Ωを代入します。
  Pc=1/(π^2) * (6.2^2)/8≒0.49W
正弦波で計算するとVccが6.2Vでも0.5Wに収まる訳です。
まあホビーだから正弦波の設計でも大丈夫です。(爆)
電源電圧は±6.2Vに決定します。


【その他の仕様】
今回はバッファという訳にはいきません。
CDプレイヤーの出力レベル2Vrmsに対し、今回の2Wアンプは4Vrms。
少なくとも+6dB以上の利得が必要です。
CDじゃなくても出力1Vrmsくらいの機器も考えに入れます。
お遊び機能も入れて、 (爆)
利得は+10dBと+20dBの切り替えと致します。
オールオーバーのNFBと、NO-NFBの切り替えも付けちゃいましょう。
具体的な回路は次回以降です。


【仕様のまとめ】
利得+10dB or +20dB切り替え
NFB or NO-NFB切り替え
出力2W @8Ω x2ch、正弦波NO-CLIP
電源電圧±6.2V
ピーク電流0.775A @8Ω x2ch    =6.2V/8Ω
最大出力4.8W @8Ω x2ch、矩形波  =(6.2^2)/8


【電源構成を考える】
アンプの仕様は以上となりましたが、これを駆動する電源を考えます。
構成は下図の様な感じでしょう。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_10552378.png

絶縁型SW電源は当方がいつも使っている回路です。
まあ効率とか無視して単純に、1次側の電流を求めてみますと、
9.6W/5V=1.92A
これに余裕を見ますと、必要なACアダプターは5Vで3A以上が必要ですな。

もう少し具体的に考えてみましょう。
出力段の電源は音質を考えて定電圧電源が必要でしょう。
増幅段用に別電源も欲しいですな。
少し実験という事で、去年作ったヘッドホンアンプの絶縁DC/DC電源に、
前回作ったポタアンを接続して様子を見ました。ヘタリ具合を見た訳です。
絶縁DC/DC電源は無負荷で7.5Vくらい必要という事が判りました。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_105546100.png

定電圧電源はちょっと難しいですな。ピーク電流は1.5Aを超えます。
市販のレギュレーターICで、プラマイ電源で、となると選択が難しい。
これをバイポーラTrで構成し、しかも高性能とするのも厳しいです。
よってMOSFETを使用した定電圧電源を考えます。
まあ次回以降の話としましょう。


【絶縁型電源の回路】
いつも使っている回路です。図をクリックで拡大です。
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今回は扱う電力も中程度ですから、効率を考えます。
*チョークコイルは手巻きで直流抵抗を小さくします。市販品で探すのは困難。
*コモンモードノイズ対策のフェライト関係も低ロスの物。
 1次側はジャンク部品のフェライトビーズを使用してみました。
 ロスが少ないですが、ノイズ対策の効果は薄いかも?
*整流ダイオードは3A品のVFが小さいものを探して使います。
*詳しい話は過去記事をご参照下さい。→絶縁型DC/DC電源


【トランスの巻きについて】
今回のトランスは間違い易そうだったので写真を掲載する事と致しました。
まずはFT-50-75の絶縁です。コア自体が導電性なので必ず絶縁します。
被覆が厚いテフロンワイアは巻き数を増やす事ができません。
エナメル線を使って沢山巻くので絶縁は必要ですな。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_10583849.jpg

次に1次巻きと2次巻きです。これは比較的簡単です。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_10584829.jpg

間違い易いのは3次の巻き上げです。3次巻きの線は細いテフロンワイヤでもOK。
まあ写真にした時に色が判り易そうだったのでテフロン線を使ってみました。
下図の写真でご確認下さい。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_1059224.jpg

2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_10591216.jpg

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基板に実装するとこんな感じに見えます。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_10593328.jpg



【作成したDC/DC電源基板】
下図の様な感じで出来ました。
2Wx2chミニアンプ①構想とDC/DC電源_e0298562_10594616.jpg

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組み立てや考え方に間違いがあれば火を噴きますから確認は容易です。(爆)

5Vを印可して無負荷の状態ですが、1次電流は71mA。
2次と3次の無負荷時電圧は設計通り。
ここで2次の±7V端子両端に30Ωを付けた2次電圧は±6.85V
この時の2次出力電力=((6.85+6.85)^2)/30=6.256W
この時の1次入力電力=5V*1.438A=7.19W
効率=6.256W/7.19W=87%
まあまあ宜しいんじゃないでしょうか?

素子の損失がNch 0.5W+Pch 0.5W、出力2W。x2chなので合計で6W。
その単純計算は本当は間違ってますが、実用的な試験状態という事ですな。



今回はここまでと致します。





【注意事項】
実験や個人的な使用は自由ですな。しかし、当方考案の回路や検証を断りもせず
商品などに採用したり記事に掲載するのは駄目ですよ。パクりはイケません。
記事の内容は鵜呑みにせずご自身で実験評価して下さい。
そして当方はめんどくさいので一切サポート致しません。(爆)

以上です。










ところで、
このページに書いた設計余裕度はアマチュアの、ホビーのレベルですが、
これよりマージンが少ない市販機器なんて、存在しないですよね?
まさか、
信じたくはありませんが、まあ存在するかも知れません。
修理屋さんが良く知っている機器ですよ。(爆)
by ca3080 | 2014-02-22 11:13 | オーディオ&電子工作
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