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DC/DC電源のノイズ対策

電源のスイッチングノイズについて、皆さんはどう対処していますか?
ここでは軽く、趣味の範囲で記載しようと思います。
仕事の貴方は…大人料金です。入場料は前払いのシステムとなっております。(爆)




非公開コメントでご連絡頂ければ料金の相談にも応じます。(爆)
(2017.12.29上記一行を取り消し致します。業務の受付は致しません。)
この記事で対象とする電源は「絶縁型DC/DCコンバーター」です。

【本稿作成の動機】
FIDELIXのページでまた大層なご説明が掲載されました。
それを見た自作派の人は「困ったぞ判らん」と思って買ってしまうんでしょうか?
まあ世界中の回路屋さんが検討に悩んでいるEMCは商売になると思います。
さて今回の投稿記事は、FIDELIXに書いてある方向性に沿った内容で、
読んだ人が実際にチャレンジできる様に、何とか具体的に書いてみます。


【測定法について】
FIDELIXの該当ページには、30MHz以下は電波の輻射じゃなくて伝導ノイズで、
LISNを使用して測定すると書いてありますな。
まずはLISNをよく調べてもらった後に、作成して下さい。
(当方の物はけっこう前に作ってあった物です。)

コイルとか高周波になると特性悪化しますのでちゃんとした良い物を使用します。
当方のコイルは手巻きでして、コアは#63材だった様な思い出があります。(爆)
巻き始めと巻き終わりが容量結合しない様に、近づかない感じにしてますな。
また、内部構造とか筐体はアースがしっかり取れる構造にします。
とか書いちゃって、本当はノイジーならぬイージーな、
すごく陳腐な作品に仕上がっております。(爆)
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_19521380.jpg

本体を叩くとコイルがビヨンビヨン振動音を立てるのが難点。(爆)
樹脂で浮かしつつも、何かうまく固定しなくちゃいけませんな。
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_19523381.jpg

銅テープとアルミテープをうまく使って、幅広にシャーシアースします。
導板の上に置いた時の接触導通も確保しています。

ここからが問題です。LISNだけ調べても使い方が判らないでしょ?
エヘヘ。  下記の様にして測定します。 (クリックで拡大)
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_19532827.png

*大地アース(アース板)を基準にして見ると、
 電源端子のプラスとマイナスから同位相のノイズが出て来る。
 これがコモンモードノイズです。
*計りたい機器とかケーブル類は、アース板に対して浮遊容量で結合している。
*コモンモードノイズはLISNでノーマルモードに変換されて、
 スペアナで測定する事ができる様になります。
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_19535012.jpg

茶色の真鍮板とアルミ板を重ねて面積を稼いでます。あまりよくありません。
手に入るならば、デカい銅板とかアルミ板を入手します。ちゃんとアースしてね。
機器を浮かすのは数十ミリくらいでしょうか? 石鹸箱でも敷いて下さい。
規定長の電源線とありますが短い線で測定して下さい。趣味に規格無し。(爆)


【スペアナについて】
スペアナですが、当方は貧乏なんでCQ出版社のキットを使用してみました。
http://shop.cqpub.co.jp/hanbai/books/I/I000061.html
APB-3
です。でも十分に高価ですな。(爆)
APB-3は狭帯域が凄いんで、水晶発振器の近傍ノイズとかを見るのに向いてます。
伝導ノイズを見るのには広帯域の違うタイプのスペアナが適してますな。

USBとACアダプタがノイズまみれなんで、ノイズの少ないアダプタを使います。
更に、USBとACアダプタの線はフェライトパッチンコアに数回巻いて対策します。
背景ノイズ(フロアノイズ)を確認して、対策の効果を見ておきます。

ここで注意事項をひとつ。
APB-3を使って直接電源ノイズを見ていたら逝ってしまいました。(爆)
過入力に弱くAPB-3の差動アンプICが故障してしまいました。
部品入手と修理に手間取っちまったョ。こりゃ故障しない様に改造だ!(爆)
改造記事を別にしました。こちら→APB-3の改造(過入力保護)


【普通のSW電源には欠点がある】
普通のSW電源はシングル・スイッチングです。
ON-OFF-ON-OFF-といった感じに動作します。
2次側の電圧が下がったら、ONの割合を増やして制御する訳です。
そういった普通のSW電源は利点が多いですが、欠点もあります。
1次側の電流は、ONとOFFがあって、間欠的電流になります。脈流ですな。
一応はLC電源フィルタなどを設けてますが、まあノイズ源ですな。
動作周波数の基本波からすでにノイズが多い訳です。
(2次側コンデンサが放電モードで音が悪いという話もあります。)


【当方作成のSW電源には利点がある】
(よく判らない人は過去記事をご参照下さい。)
まずは1次2次が少ない巻き数で絶縁されてます。ハムノイズ皆無の世界ですよ。
次に、プッシュプル電源回路です。マイナー路線ですな。
しかも電圧制御無し。デューティー最大、フルパワーで動きっぱなし。
右ON-左ON-右ON-左ON- ...相撲の"突っ張り"ですかいね?
スキマを埋め尽くすが如く。ONで押し通す。
でもスキマは無くす事ができませんから、ちょっとノイズになりますな。


【ノイズ対策の考え方と具体的回路】
それではどうやってノイズ対策すれば良いのでしょう?
LISNの測定法を見れば、ノイズの伝搬経路が判ります。
ノイズ源→電源端子→(LISN)→大地アース→浮遊容量→ケーブルや筐体→ノイズ源
まあ出た物は元の場所に戻る。よって、
 ・この大きな流れを断ち切る:コモンモードコイル、フェライトビーズ
 ・ノイズの流れを内部にとどめる:ノイズ帰還コンデンサ、貫通コン
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_20193372.png

使用したフェライトビーズは100MHzあたりに効果的な奴を用いています。
ノイズをバイパス帰還させるC10は1000pFですが、最適な値があるかもね?
いずれも40MHz以上を見れるスペアナを持ってないので追求していません。
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_20331031.png



【対策の具体的効果】
それではいよいよ、LISNを使用して測定し、対策の効果を調べてみます。
まずは上記に記載した対策を一切やらない場合です。
水色の波形は電源OFFのバックグラウンド・ノイズ。フロア・ノイズ。
ピンクが電源ON後のノイズ。けっこう出てます。
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_2022294.png

次に、プラス側、ホット側だけにフェライトビーズを入れたもの。
ノーマルモードの対策です。
まあやっぱり効果無しというか、ノイズの出方が変わっただけ。
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_20231192.png

次に、上記の対策をすべて盛り込んだ状態です。
GND側にフェライトビーズ追加と、ノイズ帰還コンデンサ追加です。
コモンモード的な対策回路になります。これは効果がありますな。
短波帯やFMラジオへの妨害等をちょっと見て、当方はこの段階で良しとしました。
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_20233029.png

更に更に、出力側にコモンモードコイルを取り付けてみました。
当然ですが効きますな。(コアが低周波用なので40MHz以上は駄目かも。)
まあつまり下図の様な感じです。
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_20234542.png

DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_20241377.png

15MHz以下のあたりは単純にLCフィルタの効きが足りないのもありますから、
コモンモードコイルの他に、もう1段LCフィルタを設ければ心理的な効果有り?



【禁断の1次GNDをシャーシに落とす】
やってはイケないという事だけを訴えてきましたが、
こうなりますのでやはりNGです。
バカとGNDは使いよう。(爆)
DC/DC電源のノイズ対策_e0298562_20243667.png



【まとめ】
電源のスイッチングノイズはラジオに妨害を与えたり、
サーボとかPLLなどの敏感な回路に妨害を与えたりして音が悪化します。
音を良くしようと思うなら、ある程度のノイズ対策は必要と思われますな。

記載してない見方とかノウハウもありますが、冗長になりますし、
ネタとしても勿体無いんで書いておりません。(爆)
経験が物を言う世界でもありますから、皆さんも対策に馴染んで下さい。
EMCとか不要輻射の業界は、まだ未開のフロンティア状態なので、
アッと驚く新発見の対策手段を見つける事ができるかも知れませんよ?

そして、ちゃんと対策するなら中古でも広帯域のスペアナが必要ですな。
ちなみに伝導ノイズには「ノイズ吸収シート」が役に立った経験がありません。
グリーンカーボランダムとか。(爆)
効果がある帯域は? GHz帯なんでしょうか?
機器へ対策する前と後の測定グラフとか見た事ありませんな?


そういう訳でございます。
当然ですが、ここに記載した対策や測定法など、全ての内容は保証致しません。
全部が妄想の虚構記事かも知れませんよ?
記事を鵜呑みにせずご自身で実験評価して下さい。当方は一切サポート致しません。
以上です。


ちょっと追記です。
FIDELIXがどのような手段で自社製のノイズフィルタを検討しているか、
それを当方に聞いても答えられませんよ。(爆)

MHz帯、GHz帯のノイズと、IHF-Aの音声帯域のノイズは全く異なる話題ですから、
ごっちゃにして勘違いしない様にしましょう。









2017.12.29追記。
9月から告知致しておりましたが、予定通りコメント蘭を削除させて頂きました。
今までコメント頂きました皆様には感謝申し上げます。ありがとうございました。
一部の行に取り消し線を追加致しました。




by ca3080 | 2013-07-12 21:04 | 電子工作(一般)
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